ユーモアのあるエッセーでしかもそのユーモアに品があるとなると、そう滅多にあるものではない。夏目漱石や、遠藤周作、北杜夫などが思い当たるが、いずれにせよ数えるほどだ。
本書の著者は、そのようにユーモアのある軽妙なエッセーを書ける稀有な存在といえる。
本業が哲学の教授であり、この種のエッセーを書き始めたのが50歳を過ぎた数年前からというから、その意外性が先ず面白い。
手馴れたエッセーという感じではないが、日常の題材を扱い、その恐妻やら、食べることと帰ることばかり考えている助手とか、ユーモア随筆としての脇役も十分揃っている。
それぞれのエピソードには、かなり自虐的な題材が多いのは、日本のユーモアエッセーの伝統のようなものだろうが、それが却って、この著者の誠実な人柄をしのばせるものとなっており、おかし味を漂わせる効果につながっている。
「プロ野球には失望した」の章での 「何故あんなに勝負にこだわるのか」と疑問を提起し、「たかが野球なのだからあんなに必死に巨人に勝とうとするのはおかしい」という論法のように、反語的な表現、二重否定的な言い回しが中々巧妙だ。
それぞれの題材の質はそこそこ高いし、確かに、面白い。
本書は「週刊文春」の連載コラム「棚から哲学」をまとめたもの。お茶の水女子大学教授である著者が、人間を哲学的に考察した面白いエッセイとなっています。女の論法の研究、哲学者の虚像と実像、神の性質、など思わず笑ってしまうものが多く、哲学を優しく解説しながらわかりやすくエッセイとしています。